☆【第十七章】より続く 元女子であることを伝えたうえで男性として生きるか、過去を隠して男性として生きるか。この二つの選択肢を息子はどう選ぶのかー。 私自身としては「あなたのすぐそばにもトランスジェンダーの人がいる」ということを、みんなにも知っ…
息子は無事に性別適合手術を終えて、タイから帰国した。 息子が入院していた病院では、一日に3回、性別適合手術が行われており、息子のオペ日も、その次の日も、またその次の日も、毎日毎日、オペの予約でぎっしりと埋まっていた。そして、そのオペの対象者…
私は息子が抱いている複雑な思いを知らなかった。 見直さなければならない問題点のある法律だが、性別適合手術を受ければ、戸籍の変更はできることになっている。(詳しくは『信じがたい条件【第十四章』) そうすれば息子は男性として生きていける。 息子は…
自分が性同一性障害であることに気づいたとき、その人がとる行動は実に様々だ。 息子のように、身体の手術を受けて戸籍まで変えたいと思う人もいれば、手術をしても戸籍の性別はそのままでいいという人もいる。 性別を訂正して暮らしていても手術はしなくて…
息子は性別適合手術をタイで受けるための手続きを始めた。 性別適合手術は、日本よりもタイの方がその症例数の多さから医療技術が進んでおり、その道に精通した医者やスタッフも充実している。 費用面でも日本に比べると格段に安くなっている。 日本では、性…
やがて、元女子の息子は二十歳になり、男子として成人式の日を迎えた。 この日に向けて、息子は新しいスーツとコートと靴を準備した。 約ニ年に渡る男性ホルモン投与のおかげで、息子の声は低くなり、見た目はすっかり男子だが、身長だけはホルモン治療でも…
息子は高校2年生の途中から学校に行けなくなり、3年生の秋に通信制の学校に転校した。 〈詳しくは『不登校【第五章】』〉 息子は転校先で理解ある校長先生に出会うことができ、サポートを受けながら、精神状態が浮き沈みするなか、なんとか大学へ進学するこ…
息子はジェンダー外来に通い始めた。 ホルモン治療が開始されれば、月経が止まり、声が低くなり、毛が濃くなり、男らしい身体へと変化していくことになる。 ただ、ホルモン治療が開始されるまでには、なかなかの手続きが必要だった。 まずは、性同一性障害で…
※※※『母の覚悟【第八章】』の決意により、我が子の呼称を「娘」から「息子」へ変えています※※※ これからの進む道がはっきりしてきたおかげで、息子はすっかり明るさを取り戻した。 でも、医師からは、一度発症したこころの病気は、その原因を取り去ったとし…
※※※ 『母の覚悟【第八章】』の決意により、我が子の呼称を「娘」から「息子」へ変えています※※※ 自分の娘から「俺は男だ」と告げられる父親の心境を思うと、それは母親が受ける以上の衝撃かもしれない。 あの子は私たち夫婦にとって最初の子どもだった。 初…
私は、娘のカミングアウトを受け入れた。 それは、あの告白のLINEだけのせいではない。 〈詳しくは『カミングアウトの日【第四章】』〉 この半年、私は我が子の命を失うかもしれない生と死のギリギリラインを何度も見てきた。 娘は全身全霊、身体を張って、…
娘は一ヵ月の入院生活となったが、そこで出会った主治医の先生が娘の心を救ってくれた。 その医師は性同一性障害の施設で働いた経験があり、その道にも詳しかった。 娘が胸の内を伝えると、とても親身になって相談に乗ってくれたのだそうだ。 性同一性障害の…
カミングアウト、今日のこの日にいたるまで、娘は相当な苦しみを抱えて生きてきた。 〈詳しくはカミングアウトの日【第四章】〉 半年前から学校にも行けなくなり、自分の存在を否定し、自分で自分を傷つけるようになった。 スクールカウンセラーさんからは自…
--カミングアウトの半年前 高校2年の夏を過ぎた頃から、娘は学校に行けなくなった。 電車で学校に向かう途中、駅のトイレの中で涙が止まらなくなった日を境いにして、娘は学校に行けなくなった。 ぜんまい仕掛けのオルゴールの音色が最後途切れ途切れにな…
あの日、娘はLINEでカミングアウトして来た。 やはり直接には言いづらかったのかもしれない。 娘の部屋と私のいる寝室は廊下を挟んで向かい合っていた。扉を開ければ、すぐに対峙できる状況であったが、あえて向き合うことはしなかった。 まるで誰も存在しな…
〈その7〉娘の思い 娘が高校生だったある日、家族で旅行に行った先で急に生理になってしまい、宿泊先の寝具を汚してしまったことがあった。 そのとき、あの子は自分のスマホをベッドに投げつけて、 「オレは好きで生理なんかになってるんじゃねー!」 と叫ん…
〈その6〉中学校生活娘は中学校に入ると「強くなりたいから」と剣道部に入部した。 髪を思い切り短くし、完全ショートヘア姿になった娘はますます男子っぽくなった。 髪を切るときには美容室ではなく、理容室に行き、「何ミリ」という単位でバリカンで髪を刈…
〈その5〉暮らしの様子 娘が小学生の頃は、近所の友達といつも忍者ごっこで盛り上がっていた。 折り紙で手裏剣を何十個も作り、刀を腰に差し、庭中を駆け回っていた。 幼稚園の制靴が草履だったせいで、すっかりその履きやすさが気に入った娘は、その後、高…
〈その4〉学用品 小学校のときには、よく学年ごとに集団購入させられる学用品というものがあった。 チラシが配られて、その中から好きなデザインのものを選んで注文する。 習字道具セット、彫刻刀セット、裁縫セット、手作りエプロンキットなどなど。 そんな…
〈その3〉言葉づかい娘は、小学5年生の頃から、言葉遣いが変わった。 自分のことを「オレ」と呼ぶようになった。 私の呼び方まで「ママ」から「母ちゃん」に変えられてしまった。 もちろん「パパ」も「父ちゃん」だ。 スーパーで買い物をしていると、遠くか…
〈その2〉キャミソール 娘は女性用下着というモノをこれまで一度も身に着けたことがない。 第一次性徴期、第二次性徴期、胸も膨らみ始めるかなという頃、 「そろそろブラジャーとかどうかな」 と提案したが、聴こえない振りに終わった。 小学5年生の林間学校…
〈その1〉クリスマスプレゼント 私の娘は、サンタさんにいわゆる女の子が欲しがるようなプレゼントをお願いしたことがない。 小学生だった娘からの要望は、 ある年は「ラジコンカー」ある年は「トランシーバー」ある年は「忍者セット」ある年は「ラジコンヘ…
娘は小学校高学年の頃から、自分のことを「オレ」と呼ぶようになっていた。 可愛いオシャレには全く興味を示さない。 中学生になると、これ以上は短くできないくらいのショートヘアになった。 他人から見れば、私の娘はすでに男の子だったかもしれない。 外…
私たちは普段何かに記名をするとき、 その氏名欄の横に必ずといっていいほど用意されている「性別」の欄に戸惑いを感じることはない。 だが、性同一性障害の人々は、この「性別」欄でペンが止まり、そのペン先はしばらく宙を泳ぐことになる。 自分は何者なの…
もし、あなたが、ご自身のお子さんから、「自分は女じゃなくて男なんだ」もしくは、「自分は男じゃなくて女なんだ」とカミングアウトされたら、どうするだろうか?―私は、我が子からこの衝撃の告白を受けた。でも、ほとんどの親はこのような事態に遭遇するこ…